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 CD Information

NON BAND『NON BAND + 5Tracks』『NON BANDIN' LIVE + 1982 LIVE』<CD>
 

 1980年代初頭のニューウェーブ・シーンを代表するバンド、NON BANDのCDが二枚同時にリリースされた。そのうちの一枚、『NON BAND + 5 Tracks』は1982年にテレグラフ・レコードから発売されてインディーズのベストセラーとなった傑作アルバムに、未発表の音源を加えたもの。NONの個性的なボーカルとベースにバイオリンとドラムが加わった類のないサウンドは、今聴いてもとても新鮮だ。今回加えられた音源は、アルバム録音に先立ってスタジオでリハーサルとして収録されたもの4曲とライブ1曲で、「バイブレーション・アーミー」と「サイレント・ハイスピード」というアルバムには入らなかった彼らの代表曲の貴重なスタジオ・テイクも含まれている。

 もう一枚の『NON BANDIN' LIVE + 1982 LIVE』には、バンド初期の1980年に発売されたソノシートと、バンド全盛期の1982年に仙台で行われたライブの全曲を収めた二枚組みで同価格という豪華盤。

 ソノシートからの音源には、バイオリン編成になる以前の初期のライブ4テイクと、バイオリンの加わった過渡期のスタジオ録音1曲が収録されている。特にドラムの伴奏のみので歌い上げる「バイブレーションアーミー」は圧巻だ。

 一方のライブ盤は1982年7月の仙台でのライブで、ギターとキーボードに元ボーイズボーイズのKUMMYと元S-KEN、東京ブラボーの坂本ミツワが加わった五人編成。このライブの一部は以前徳間ジャパンからリリースされたCDに収められていたが、ライブ全曲が収録されるのは今回が初めてで、「ZANPANO」という未発表曲も含まれている。カセット録音だがテンションの高い演奏に会場の熱気も充分に伝わってくる。

 今回、初めて全曲の歌詞カードがついているのも特筆される。

●「NON BAND」
  「NON BANDIN' LINE」CD×2
定価:各2,940円(税込み) 発売:SKY STATION INC.

2007年10月25日発売

 

特集

 


NON BAND


「NON BANDIN' LINE」

 


ROVO LIVE at 京大西部講堂 <DVD/CD>
 

自由なスタンスでスケールの大きな活動を続けるROVOが、オフィシャル・ブートレッグの第三弾として、2004年7月18日に京大西部講堂で行われた「P-hour02」というイベントでのライブの模様を記録したCDとDVDをリリースした。これはこれまでライブ会場だけで販売されていたものが、一般発売となったもの。

 この日のライブは空調設備のない超満員の西部講堂において、気温50度、湿度100%という極限状態で行われたという。しかし、そのような異様な状況がかえって集中力を高めたのか、極めてハイテンションかつ稠密な演奏が繰広げられている。

 ブートレッグといっても音質は非常にクリアであり、またDVDの映像もカメラを何台も使った本格的なものて、聴きごたえ見ごたえ充分だ。

 その心地よさにに浸りながらも、次第に心の内側にエネルギーが沸き立ってくるような力を、ROVOの音楽は持っている。

◎ROVO LIVE at 京大西部講堂 CD
収録曲 5曲 / 定価 2,300円(税込み)

◎ROVO LIVE at 京大西部講堂 DVD
収録曲 6曲 約 (B1時間20分 +ボーナストラック(ベルギーでのライブ) 定価 3,300円(税込み)

いずれもROVOLONE/ワンダーグラウンド・ミュージックより2007年7月18日発売

 

 


ROVO LIVE at 京大西部講堂 CD


ROVO LIVE at 京大西部講堂 DVD

 


三上寛『寛流〜初の韓国ライブ2006』、『吠える練習///白線<CD>
 

 三上寛の新作が2枚出た。90年代にPSFレコードと出会って以来、毎年一枚づつの新作ソロ・アルバムを発表し続け、前作『1979』でひとまず完結ということだった。しかし、それ以降、三上寛の創作意欲は一段落するどころか、逆に以前にも増して旺盛になっているという。それはここ数年、韓国からさらにヨーロッパにまでその活動の場を広げていることに関係しているようだ。

 一枚目のアルバム『寛流』には、2006年8月に初めて韓国ソウルで行ったライブが収められている。三上寛と韓国とのかかわりは、韓国の伝統音楽家、辛恵英(シン・ヘヨン)と共演するなどこれまでも深かったが、現地でのライブは画期的な出来事だ。「この地で日本語で歌うことが、日本語という言葉を先祖がえりさせる」と三上寛は語ったとライナーに書かれているが、その歌声には何か時空を越えた響きすら感じられる。

 『吠える練習///白線』はスタジオ録音のソロ・アルバムだ。かつて怨歌と呼ばれた三上寛の歌だが、このアルバムから伝わってくるのは渦巻く情念ではなく、日本人の源郷へと通じる深い情感のようなものだ。この変化はヨーロッパでの体験からきているかもしれないと当人は語った。フランスの大地に失われた津軽の風を感じ、深夜にはるか古代からの音を聴いたという三上寛。もはや三上寛の世界は時空を超えて広がり、魂の源郷への旅へと聴く者を誘うのだ。

(『寛流』三上考務店MK-05. 2007 / 『吠える練習』PSFレコード PSFD8026.2007)
(『ザ・ベスト』2007年7月号に地引雄一による三上寛のインタビュー記事が掲載されています。)

 

 


寛流〜初の韓国ライブ2006


吠える練習///白線

 

LIZARD / ROCK'N ROLL WARRIORS -LIVE'80- <DVD>
 

 東京ロッカーズのムーブメントを牽引したバンド、リザードの貴重なライブ映像がDVD化された。1980年9月に関西ツアーの一環として鳥取のライブハウスで行われたライブがビデオ撮りされていたのだ。

 この時のリザードは既に紅蜥蜴時代からのオリジナルメンバーだったギターのカツと、初期のリザード・サウンドを特徴付けていたキーボードのコウが抜け、新たにギターに北川哲夫が加入し、モモヨ(Vo.)、ワカ(Ba)、ベル(Ds)、北川(Gr)の四人編成となっている。北川のサイケデリックなギターが加わったこともあり、サウンドもかなり変化している。

 この日のステージは、ライブハウス側からの要望によって二部構成になっており、「まっぷたつ」以外は同じ曲を二度演奏するという変則的な構成だ。DVDには全ステージが収められているが、パート1は肩慣らし的な感じが強く、彼らが本領を発揮するのはパート2に入ってからだ。何かに取り付かれたように爆進する疾走感と重量感は、時代の空気を映して鮮烈だ。25年以上たった今見ても、心を突き動かされるものを感じる。

 特典映像として、ロンドンでのライブ音源に写真をコラージュしたミュージッククリップと、モモヨの最新インタビューが収録されている。インタビューでは、演奏されている曲についてのコメントが述べられているが、一曲一曲に込められた当時の彼等のロックに対する意識の高さに改めて驚かされる。

◎リザード/ロックンロール・ウォリアーズ -LIVE'80-
DVD カラー・モノラル・98分+特典35分
 定価 4,935円(税込み) 発売中(2007.1.27)
 発売元: 株式会社トランスフォーマー

 

 


LIZARD / ROCK'N ROLL WARRIORS -LIVE'80-

 


渋さ知らズ/lost Direction
 

 その勢いの留まることを知らない「渋さ知らズ」。このところ初の大手レーベルからのベスト盤をはじめ、CDやDVDが立て続けにリリースされているが、本家・地底レコードからヨーロッパからの逆輸入盤がリリースされた。

 これはもともと渋さ知らズがドイツのメールス・ミュージックのために2002年に録音した音源で、それがドイツでCD化されたのを記念して、国内でも輸入盤、輸入ジャケットに副島輝人の解説を加えて販売する運びとなったという。

 ヨーロッパでの渋さ知らズの知名度と人気は想像をはるかに越えており、世界三大ジャズ祭のひとつであるメールス・ジャズ祭には何度も参加し、トリを務めて超満員の観客を熱狂させているという。

 ヨーロッパの聴衆に向けて録音されたこのCDは、激しいインプロビゼーションが縦横に展開され、フリージャズ・バンドとしての渋さ知らズの真髄が存分に発揮されている。その中に、渦巻くような日本的な情念に加えて、50〜60年代のヨーロッパB級映画のサウンド・トラックを思わせるいかがわしさをも感じさせるところが、渋さならではの魅力と言えるだろう。(J)

<地底レコード/Moers Music 2005.10>

 

 


渋さ知らズ/lost Direction

 


突然段ボール/お尋ね者
 

 突然段ボールのリーダー、蔦木栄一さんが亡くなってはや二年半が過ぎた。現在、弟の蔦木俊二を中心として、蔦木さんの遺志を受け継いだメンバーによって突然段ボールは活動を続けており、今回蔦木栄一亡き後初となるCDもリリースされた。

突然段ボールというと、その音楽性やマイペースな活動から泰然としたイメージか思い浮かぶが、蔦木栄一というミュージシャンは、本質的な部分でアナーキーな無頼派だったと思う。突然段ボールには、彼の激しい怒りを秘めた頑強な意志と、知的な狂気が込められているように感じる。

 晩年、蔦木さんは「昔は俺たち、仲間はずれだったけど、今は若い人たちがたくさん回りにいて楽しい」と言っていた。そんな若い人たちによって、突然段ボールという存在とその精神は受け継がれていくのだ。

 CDには、現在のメンバーによる演奏5曲に、親方(蔦木栄一)存命中のライブが一曲収録されている。(J)
 <日本カセット・テープ・レコーディング 2005.10>

 

 


突然段ボール/お尋ね者

 


E.D.P.S/LAST LIVE
 

 現在も画家として活躍するかたわら音楽活動も続けている恒松正敏が、80年代前半に結成したバンド、E.D.P.S(エディプス)のラスト・ライブの音源が初めてCD化された。

 フリクションのギタリストとして名を馳せたツネマツ・マサトシ(当時はカタカナ表記だった)が、フリクション脱退後、自身のバンドE.D.P.Sを結成したのは1982年5月のこと。その年の年末にはテレグラフから三曲入りのシングル盤をリリース、その後メジャー・レーベルからスタジオ録音アルバムと2枚とライブ盤を1枚リリースし、今回のCDに収められた84年12月の渋谷ライブ・インでのライブを最後に解散している。わずか2年半しか活動期間がなかったわけだが、そのバンドとしての存在感は圧倒的で、その濃密なサウンドは恒松正敏の音楽活動のピークに位置するだけではなく、ギター・ロックのひとつの完成形ともいえる。

 E.D.P.Sは、ギターの恒松正敏にベースのヴァニラとドラムのボーイが加わったトリオ編成だったが、この三人がステージにそろうと、独特の張り詰めた空気が漂い、実にストイックな男気の世界が生み出された。途中で、ヴァニラが自分の演奏に自信を失いバンドを離れた時期があったが、やはりE.D.P.Sはツネマツ、ボーイ、ヴァニラの三人がそろってこそのものだった。バンドは人と人の結びつきによって生まれる生き物なのだと、実感させてくれたバンドでもあった。それゆえに、その活動は短期間に集中され、長く続けることを潔しとしなかったのだろう。

 このラスト・ライブにはツネマツ、ボーイ、ヴァニラの最強トリオに加えて、三人のゲスト・ミュージシャンが参加している。バイオリンの山岸麒之介(NON band)とキーボードの古澤隆弘(バナナリアンズ)は、これまでもレコーディングやライブに参加しており、ギターの伊藤マキはツネマツ・マサトシがゴジラ・レコードから出したソロ・シングル(78年)にも加わっていた古くからの音楽仲間。この気心の知れた伊藤マキとのツイン・ギターによって、重厚でありながら疾走感のあるE.D.P.S特有のサウンドが、より一層エネルギーを増している。E.D.P.Sのレコーディングとライブを全て手がけたエンジニア小西康司がライブ・レコーディングを担当しており、音質も申し分ない。メジャー・レーベルからの三枚のアルバムに並ぶ充実した内容の作品が、バンド解散後21年にしてこの世に出たわけだ。 (J)
(SKY STATION 2005.10)

 


E.D.P.S/LAST LIVE

 


リザード/TOKYO ROCKERS '79 LIVE
 

 日本のパンクロック・シーンのオリジネーターであるリザードの音源が、次々とCD化されている。メジャーから発売されたアルバムやシングル、紅蜥蜴時代のアルバムとシングル、さらにテレグラフからリリースされたロンドン・ライブを収めた「彼岸の王国」、1978年のS-KENスタジオでのライブなど、全盛期の音源はほぼ出揃った感じだが、新たに実に貴重な未発表音源がCD化された。それが、1979年にリリースされた歴史的なライブ・オムニバス盤「東京ROCKERS」収録時の演奏を全曲収めたこのアルバムだ。

 前年からすさまじい勢いで燃え広がった東京ロッカーズのムーブメントのピークとなったこのオムニバスには、リザードに加え共にムーブメントの中核を担ったフリクション、ミラーズ、ミスター・カイト、S-KENの5バンドが参加。78年3月11日に新宿ロフトで昼夜二回、各限定100人の観客を集めて、ライブ録音が行われた。昼夜ほぼ同じ曲を演奏し、その中からベストなテイクを選んで、各バンド2曲づつがアルバムに収録されている。リザードは夜の部の冒頭に演奏した「ROBOT LOVE」と「REQUIEM」を収録、それ以外のテイクはこれ まで全く公開されることなく、長い間幻のテープとなっていた。

今回、その音源がCD化されることに至った詳しい経緯は知らないが、リザードだけでもこうして全部の演奏を聴くことができるようになったのは実に嬉しい。

 このアルバムには、リザードの昼夜二回の同じ曲目、同じ曲順による演奏が全曲収められている。この日演奏されたのは、オムニバス盤「東京ROCKERS」収録曲の他、「MODERN BEAT」「T.V.MAGIC」「MARKE(ING) RESERCH」「GUYANA」という当時の彼らのライブで常に演奏されていたの代表的な曲、6曲だ。レコーディングを意識してか、その演奏は全体的にタイトで、勢いやエネルギーという点ではS-KENスタジオやロンドンでのライブに一歩譲るが、曲としての輪郭がくっきりとして完成度が高い。モモヨの個性的なボーカルもクリアで、聴き応えがある。さらに貴重なのは、オムニバス盤では完全に消されていた客席の歓声が生かされていることだ。期待感と緊張感が入り混じった、東京ロッカーズの時代の独特のライブ会場の雰囲気を、いくらかでも感じ取ることができるのではないだろうか。 またジャケットの内側には、シュルツ春名がデザインしたこのイベントのポスターが収録されており、時代の感性を伝えている。(J)<SKY STATION 2005.10>

SKY STATION RECORDING MASTERPIECE シリーズでリリースされたリザード作品
オムニバス「東京ROCKERS」
アルバム「LIZARD」「バビロン・ロッカー」「ジムノペディア」「彼岸の王国」「LIZARD III」シングル「TV.MAGIC」「浅草六区」「SA・KA・NA」
紅蜥蜴
アルバム「けしの華」
シングル「SEXUS」「デストロイヤー」

 


リザード/TOKYO ROCKERS '79 LIVE


リザード/LIZARD


リザード/彼岸の王国

 


マーブル・シープ/FOR DEMOLITION OF A SPIRITUAL FRAMEWORK
 

 キャプテントリップ・レコードの主宰者である松谷健の率いるヘビー・サイケデリック・バンド、マーブル・シープの2年振りのスタジオアルバムが昨年末にリリースされている。

 マーブル・シープは1987年に結成、新しいサイケデリック・ロックを打ち出してコアなファンの支持を集めたが、94年に活動を休止。その後、松谷健はキャプテントリップ・レコードの運営に専念し、ジャーマン・ロックの名盤を数多くリリースするとともに、ゆらゆら帝国などの国内のバンドのサポートも精力的に行ってきた。そして、99年末にはバンド活動を再開しアルバム『STONE MARBY 』をリリース、今回のアルバムは再開後2枚目にあたるわけだ。

 正直言って、活動休止前から前作までのやけにきれいに整ったサウンド作りには、どうにもピンとくるものがなかったのだが、今作を聞いて驚いた。荒々しさと躍動感が全編にみなぎり、素晴らしい出来ばえなのだ。歪んだギターのサウンドだけ聞いても、心が踊る。さらに、松谷健の些細なことにはこだわらないオープンマインドな性格が、マーブル・シープの音楽をサイケデリックでありながら、広がりのあるエネルギッシュでポジティブなものにしている。彼と個人的に親しいとかいうことは別にして、遅ればせながらこれは絶対推薦盤。傑作なんじゃないだろうか。(CaptainTrip Record 2003)

 


マーブル・シープ/FOR DEMOLITION OF A SPIRITUAL FRAMEWORK


渋さ知らズ/渋星
渋さ知らズ/自衛隊に入ろう
 

 渋さ知らズとしては、1995年の『BE COLL』以来となる、スタジオ録音によるアルバムがリリースされた。サン・ラーの曲が二曲、また初めてのスタジオ録音となる「本田工務店のテーマ」などオリジナル曲5曲を収録(全8テイク)。折からフジロックで来日していたサン・ラー・アーケストラのメンバー三人が、自分達の曲ではなく、渋さ知らズの曲に参加している。宇宙を駆けめぐるスケールの大きさとエネルギーを感じさせる、ジャズ色の強い本格アルバムだ。

 この力の入った『渋星』リリースの直後に、渋さ知らズのシングルCDが緊急発売されることになった。曲名は『自衛隊に入ろう』。70年代のアングラ・フォークの時代に、高田渡によって歌われた代表的なプロテスト・ソングのカバーだ。もともとはエイベックスから発売されるはずだった、URCレコードのトリビュート・アルバムに収録されるために録音されたものという。

 このシングルのリリースにあたって、地底レコードはこう述べている

「地底レコードと渋さ知らズは、いかなる戦争行為への加担に反対であることを表明します。残念ながら現在の音楽シーンの中から、派兵や戦争に異を唱えるメッセージを伝える声は聞こえていないように感じられます。ですから、たとえその声が我々からだけであっても、それがどんな小さな声であっても、敢えて声を挙げたいと思いました。」

 『自衛隊に入ろう』は、自衛隊が存在することの矛盾を逆説的な表現で歌ったものだが、存在どころか、海外派兵が平然と行われることになってしまった今、きわめて現実的な危機感が伝わってくる。
(地底レコード 「渋星」2004.1.25 「自衛隊に入ろう」2004.2.2)

 


渋さ知らズ/渋星


渋さ知らズ/自衛隊に入ろう

 


mjuc/monody
 

すでに一年近く前に発売されたアルバムだが、この一年最も多くCDプレーヤーに乗った一枚でもあるので、遅ればせながら紹介させていただく。

 mjuc(ミューク)とはnature bluntやDeep frameのコンポーザー、キーボーディストとして知られる高橋英明のソロでの名義。「everlasting 」に続くフル・アルバムだ。ストリングスと鍵盤の美しい音色と、ノイジーなパーカッシヨンがクールに溶け合い、透明感にあふれた実に心地よいサウンドが展開される。アンビエントだが、静かな力強さもある。生活にハリを与えてくれる、何度でも聴きたくなるような音楽だ。

 それにしても、このようないわば人工的に作られたサウンドが、アコースティックなサウンドや自然の音以上に、心に安らぎや活力を与えてくれるというのも、何か不思議な感じがする。
(aiding music 2002.10)
http://www.aiding.jp


mjuc/monody


Neither/Neither World / She Whispers
 

サンフランシスコを拠点に1990年から活動するNeither/Neither World (ネイザー・ネイザー・ワールド)の、日本での初リリースとなるアルバム。オリジナルに日本リリースのために新曲3曲を加え、意欲的なリリースを続けるイディーズレーベル、ピープルズ・レコードから発売された。このアルバムに合わせ、4月には来日、東京、名古屋、大阪でライブ公演を行っている。

 Neither/Neither World は女性ボーカルのウェンディ・ヴァン・ドゥースンを中心としたバンドで、ネオ・フォークから出発し、次第にロック色の強いサウンドになったという。アメリカのバンドだが、そのサウンドにはブリティツシュ・ロックの色合いが感じられ、サイケデリックな深みのあるギターが実に心地よい。そして、なんといってもバンドの魅力の中心となるのは、ウェンディのボーカルだ。ある時はささやくように安らかに、ある時は幼さを感じさせる程たよりなげに、そしてまた時に軽やかに、聴く者の心にじんわりと唄いかけてくる。何度もくりかえし聴きたくなるアルバムだ。
(People's Records 2003.4)
http://peoplesrecords.net


Neither/Neither World / She Whispers


蟲/勝手にしくされ
 

 関西で活動する狂乱パンク・バンド「蟲」のアルバム。ジャケットはもろセックス・ピストルズのパロディだが、中身も単純なパンク・スタイルだけかと思ったら、どっこい大違い。もちろんタイトル曲の「勝手にしくされ」はじめ、ストレートでエルネギッシュな曲が中心だが、情念のこもったバラードや、あぶらだこを彷彿させるひねくれた感じの曲、アコースティク・ギターを使った弾き語りまであり、そのサウンドはかなり多彩だ。そのどれもが、自分たちの音になっている。

 さらに特筆したいのは、リーダーの市村マサミの書く歌詞だ。今の世の中に対して、真摯に、激しく、時に詩的に、無茶苦茶に、自分の言葉で向き合っている。多彩なサウンドも、彼の何かを伝えたい気持ちから必然的に生じてきたものなのだろう。ボーナストラックとして頭脳警察の「さよなら世界夫人よ」をカバーしているところにも、彼らの姿勢がうかがえる。久々に骨のあるバンドに出会った。

 なお、「蟲」は現在「アメフラシ」と改名して活動している。
(カオスファクター・レコード 2003)
http://www.geocities.jp/chaosfactorrecord/


蟲/勝手にしくされ


ブラン/憧れと幻想
 

 本格的スリーピース・バンド「ブラン」の二枚目のアルバム。

 ベースが唸りをあげて突っ走る骨太のサウンド。攻撃的で、時には内省的な言葉が心をつかむ、力のこもったボーカル。まさに、これがロックというものだ。

 ライブで鍛え上げられたであろうそのサウンドは、スケールの大きな表現力を持って、ある種の(ロックでしか伝えられない)快感すら感じさせる。

 これ以上の説明は必要としないであろう、本物の一枚。
(いぬん堂 2003.5)


ブラン/憧れと幻想


佐々木彩子/SORA
 

 渋さ知らズの中心的メンバーのひとりとして活躍するピアニスト/シンガーの佐々木彩子の二枚目となるソロ・アルバム。参加メンバーは御大・不破大輔(Bass)をはじめ、下川直広(Sax)、小森慶子(Sax) 、北陽一郎(Horn)、室館あや(Flute) 、つの犬(Ds)、関根真理(Per) といった面々。
時にはハードに、時にはメロウに響き会うジャズ・サウンドと、メロディアスでポップなボーカルが、実にいい感じに混ざり合い、魅力あるサウンドを生み出している。演奏力の高さは当然だが、ことにこのアルバムは、意外にと言っては失礼だが、ボーカルがとても素敵だ。抑制のきいた気だるさと、どこまでも広がりのある伸びやかさが、聴く者を心地よい世界へと誘ってくれる。やはり、歌の持つ力は素晴らしい。長く愛聴盤となるだろう一枚。
(地底レコード 2003.2)


佐々木彩子/SORA


LIZARD/LIVE AT S-KEN STUDIO '78 and more!
 

 日本のパンク/ニューウェーブ・シーンを切り開いたバンド、リザードの貴重な音源が初めてアルバム化された。東京ロッカーズのムーブメントが熱く盛り上がった1978年秋に、ムーブメントの拠点となった伝説の音楽スタジオ「S-KEN スタジオ」で行われたライブが、ライン録りマルチチャンネルで録音されていたのだ。

 その日のライブは、同じく東京ロッカーズの中心バンドとして活躍したミラーズとのジョイントで、狭い S-KENスタジオにはみ出さんばかりの満員の観客を集めて行われた。当時のリザードのライブは、30分足らずの短い時間に、曲間のブレイクも一切なく、全力で突っ走るような凝縮されたもので、今回のアルバムにはそのワン・ステージまるまるノーカットで収められている。

 リザードは既に紅蜥蜴という名前で、東京で最もスキャンダラスなバンドとしてアンダーグラウンド・シーンで長く活動していたが、パンクの時代的インパクトを受け、リザードとして全く新しいバンドに生まれ変わった。この演奏を聴くと、紅蜥蜴からリザードへの変遷がよくわかり、後にリザードのアルバムに収められる曲が、別の歌詞とタイトルで演奏されていたりする(例えば「浅草ロック」の原型となる「ロッククリティック」など)。曲想もかなりポップだ。しかしやはり、演奏全体から発するエネルギーや高揚感は、まさに時代を変えていく力を感じさせるもので、新鮮さを全く失っていない。この録音テープを聴いて、ストラングラーズのジャン=ジャック・バーネルがレコーディングのプロデュースを申し出たという、リザードにとっても大きな歴史的意味を持った音源だ。

 このアルバムにはさらに、リザードのモモヨが発足させたレーベル「ジャンク・コネクション」からリリースされたシングル盤「サカナ」と、S-KEN スタジオでレコーディグされたデモテープのテイク3曲が収められている(当初はゴジラ・レコードとしてリリースされるプランもあったようだ)。初めてCD化された「サカナ」とそのダブ・バージョンは、リザードの代表曲の一つといってもいい仕上がりで、改めてリザードの足跡の大きさを感じさせる。(MAGNET RECORD 2002.12)


LIZARD/LIVE AT S-KEN STUDIO '78 and more!


IMPOSSIBLE! / 80's Japanese Punk & New Wave
 

 徳間ジャパンのWAXレーベルからは、多くのパンク/ニューウェーブの名盤がリリースされ、また貴重なインディーズの名品のリイシューも積極的に行われてきたが、そのカタログの中から80年代のシーンを代表するバンドを集めたコンピレーションが発売されている。未発表のテイクや初CD化の曲も含まれ、全22曲とボリューム満点だ。企画を担当した「いぬん堂」による思い入れのこもった詳細な解説も見どころ。我がテレグラフ・レコードからもNON BAND、すきすきスウィッチが収録されている。聞き流すにはもったいない、80年代パンク・ニューウェーブのエッセンスのつまったアルバムだ。

 収録バンドは、ザ・スターリン、ザ・ラビッツ、あぶらだこ、吉野大作&プロスティチュート、午前四時、コクシネル、サボテン、NON BAND、突然段ボール、アーント・サリー、スーパーミルク、P-MODEL 、Shampoo 、すきすきスウィッチ、GATE BALL 、ザ・コンチネンタル・キッズ、THE STAR CLUB 、アレルギー、E.D.P.S 、フールズ、マッスル・ビート、ヤプーズ。(徳間ジャパン 2002.11)


IMPOSSIBLE! / 80's Japanese Punk & New Wave


シャンプー/コールド・スリープ
 

 1982年に平沢進のプロデュースによるシングル盤『Tonight 』をリリースして話題となった、テクノポップの女性デュオ「SHAMPOO」。当時の音源は他にオムニバス・アルバム『レベル・ストリート』に収録されたものが残るだけだが、なんと、活動開始から23年目にあたる今年、新録による初めてのフルアルバムがリリースされた。

 シャンプーは1983年にメンバーのひとりである足立真理が渡米、その後は折茂昌美ひとりとなり、ゲストを向かえてライブを行っていたものの、翌年には活動は休止。折茂昌美は個人的な音楽活動は続けていたようだが、1999年12月に、実に15年ぶりにシャンプーとしてのライブを行った。そして今回のファースト・アルバムのリリースへと発展したわけだ。

 実質的に折茂昌美のソロといえるこのアルバム、サウンド的には、80年代初期のチープで無機的な(それが魅力だったわけだが)テクノポップ・サウンドに比べ、ぐっと幅広く豊かになっている。しかし、ちょっとアンニュイで、蠱惑的なボーカルと、全体のクールでいてセンチメンタルな雰囲気はやはりSHAMPOO !

 それにしても、80年代のシーンを作ってきたミュージシャン達の、最近の活躍ぶりには驚かされる。
(40Winks 2002.9.15)
http://www2.biglobe.ne.jp/~shampoo/


シャンプー/コールド・スリープ


NON/ie
 

 '80年代初頭のパンク・ニューウェーブ・シーンで、女性ボーカルの NON(ノン)の存在感あふれる個性と、バイオリンをフューチャーした類のないサウンドで、コアなファン層から強い支持を得ていたバンド、NON BAND。残念ながら活動期間は短く、現在は一枚のCDでその輝きの片鱗に触れることができるだけだが、そのNON BAND以来なんと20年ぶりとなるNON のソロによるフル・アルバムが完成した。

 NON は現在生まれ故郷の青森県弘前市に住み、数年前から音楽活動を本格的に再開。地元でライブ・イベントを開催したり、東京でもオリジナルのNON BANDの復活ライブや灰野敬二、吉田達也とのライブ・セッションを行っている。その彼女の新しい音楽世界が、この一枚のアルバムに詰め込まれた。

 NON のボーカルとベースに加えて、今回のレコーディングにはオリジナルのNON BANDのメンバーである山岸騏之介(バイオリン、ギター、ブズーキ<民族楽器>)と玉垣満(ドラム、パーカッション)が参加。さらにNON と何度かセッションを行っている吉田達也(ドラム、パーカッション、ボイス)と、キキオンの佐々木絵美(アコーディオン)も参加し、アルバムに広がりを与えている。

 NON の歌は、その豊かさをさらに増して、大きく伸びやかに広がり、また時には生きる切なさを湛えて、聴く者の心に伝わってくる。NON がこれほどまでに「うた」の持つ魅力を体現できる歌い手だったというのは、新鮮な発見だった。曲想もサウンドも多彩だが、最近のライブにおける代表曲「家」が、オリジナルNON BANDの三人によって演奏されるのが素晴らしい。かつてのNON BANDを知らない人達にも、ぜひ聴いてほしい素敵なアルバムだ。
(OZ disc 2002.10)


NON/ie


MAN DRIVE TRANCE COMPILATION vol.1
 

 新世紀のフロント・ランナーとしてますます活躍の場を広げているROVOが、1998年以来続けているシリーズ・パーティ「MAN DRIVE TRANCE」。毎回、合い通ずる感性を持ったバンド、ユニット、DJが共演し、超満員の観客の熱気に溢れているが、そのMAN DRIVE TRANCEに出演したアーチストを集めたコンピレーションの第一弾がリリースされている。

 ROVOを始め、レイヴ創成期から活動を続け、ボアダムズのHIRA参加するトランス・シーンを代表するバンドAOA。同じくボアダムズのYOSHIMI がボーカルを担当するエスニックなスピリチュアル・ユニットPsychobaba。ミラーズ以来東京のパンク・シーンからレイブ・シーンの先頭を走りつづけるDJ-HIGO ことヒゴ・ヒロシと、東京ブラボーなどニューウェーブ・ポップ・シーンで活躍したブラボー小松が参加したKINOCOSMO。東京スカパラダイス・オーケストラの元リーダーであるパーカッショニストASA-CHANG のトライバル・トランス・ユニットASA-CHANG & 巡礼。京都のオルタナ・シーンからスタートし、アンダーグラウンドなクラブ・シーンで活躍するエレクトロ・ジャズ・トランスSOFT。そして、勝井祐二がプロデュースした五島列島在住の若者達による清新なトライバル・ロック・トランス・バンドIrish Chaplin と全7テイクを収録。

 パンク・オルタナティブ・シーンにルーツを持つミュージシャンが多く参加していることからも明らかなように、音楽の境界が崩れ、場そのものが大きく変質しつつある、まさに現在のシーンそのものを表し、その先を垣間見せてくれるアルバムだ。ひとつひとつのテイクのクオリティも高い必聴盤。なお同時に、既にこの欄で紹介した、ライブ会場と通販のみで販売していたROVOの「LIVE at LIQUID ROOM 2001.05.16」も、一般ルートでリリースされた。(wonderground 2002.7)
 次回のMAN DRIVE TRANCE は、12月20日(金)渋谷AXで開催予定。


MAN DRIVE TRANCE COMPILATION vol.1


大沼志朗トリオ/Danny
 

 15年にわたってフリージャズ界で活躍してきた不破大輔らとのトリオ、フェダインを解散したドラマー大沼志朗の、新メンバーによるトリオのファースト・アルバム。

 フェダイン解散後に出会った若手サックス・プレーヤー渡辺てつと、一夜の演奏で気心を通じ合ったベーシスト永塚博之との新トリオによって行われた、ジャズ・スポット「豆鉄砲」でのライブを収録したものだ。タイトルの「ダニー」とは、サン・ラ・アーケストラに在籍したアルトサックス奏者故ダニー・デイビスのことで、ダニー・デイビスが'80年代初頭に日本に3年程住んでいた時、大沼志朗は彼とデュオを組んで演奏を重ね、多くのことを学んだという。収録曲は、ダニー・デイビスが口ずさんだメロディーに、大沼がリズム・パターンを付けて完成したもの。

 ますます人気を呼んでいる渋さ知らズにも参加する大沼だが、このライブでも、終盤に向けて、三人だけで渋さ知らズに匹敵する程の高揚感を生み出している。(地底レコード 2002.5.2)


大沼志朗トリオ/Danny


アーント・サリー
 

 紹介が遅れたが、名盤中の名盤『アーント・サリー』の唯一のアルバムが初めてCD化されている。権利の問題などで、これまで再発は困難と思われていたが、レーベルの努力で諸問題もクリアされたようで、これは快挙といっていい。

 日本のパンク・ニューウェーブの黎明期に、ボーカルのPhewを中心として関西で結成されたアーント・サリーの登場は、まさに衝撃的だった。東京で沸き起こった東京ロッカーズとは微妙に感応しながらも、全くオリジナルな音楽性とスタンスを貫いた彼等の存在はシーンを越えて際立っていた。そのアーント・サリーが残した唯一のスタジオ録音盤が、関西のロック雑誌『ロック・マガジン』の主宰するヴァニティ・レコードから1979年にリリースされたこのアルバムだ。
少女のリリシズムと世界への悪意をないまぜにしたPhewの詩と歌、孤独感そのもののようなビッケ(現ラブジョイ)のギター、ポップさとアート性を併せ持つ彼らの音楽は、聴くものを非情に突き放し、魅惑する。

 ある意味Phewの対極的存在だったともいえる戸川純による、長文力作の解説が付けられており、当時の音楽シーンの中でアーント・サリーとPhewの与えた影響の大きさや、その際立った音楽性などがよく理解できる。なお、ボーナストラックとしてライブ音源の3曲がプラスされている。

 今回CD化されたものを改めて聴き、時代を越えた必聴盤だと再認識した。(UNDO Records 2002.3.18)


アーント・サリー


コクシネル/ボーイズ・ツリー
 

 元めんたんぴんのギタリスト池田洋一郎と女性ボーカリスト野方せつを中心に1980年に結成され、現在まで独自のスタンスで息の長い活動を続けているコクシネル。彼らが1986年にリリースした唯一のフルアルバムが初めてCD化されている。

 なぜかジャケットにはメンバーのクレジットがないが、上記の二人に加え、石渡明広、早川岳晴、工藤冬里といった錚々たる面々が参加している。

 コクシネルはピナコテカ・レコードから変形レコードを出したり(近日CD化予定)、「天国注射の夜」に出演したりと、アンダーグラウンドな部分での活動が多かったが、どこにも所属することのない風のような存在感を持ったバンドだった(今もきっとそうだろう)。そのサウンドもフワリと手から逃げていくような浮揚感がある。そして何よりも野方せつのモノトーンのボーカルが、はかなげでいて芯の強さを感じさせ、いつのまにか心の中に静かに入り込んでくるのだ。(いぬん堂 2002.2)


コクシネル/ボーイズ・ツリー




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