80年代初頭のパンク・ニューウェーブ・シーンに躍り出た女性ロッカー達の、先頭に立って突き進んだNON BAND。短い活動期間だったが、そのオリジナリティと躍動感にあふれるサウンドとステージは、忘れられない印象をシーンに残した。
そのNON BANDのノン(保坂則子)は現在、故郷の弘前に住み、地元での音楽活動を着実に続けている。2000年には17年ぶりにオリジナルメンバーによるNON BANDのライブを東京で行い、さらに2002年秋には全曲新曲による初のソロアルバムをリリース。現在進行形のノンの豊かな歌の世界を伝えている。
NON BAND ●NON BAND in 80's
マリア023
東京ロッカーズの時代の1979年、ノンはベーシストとして、後のオートモッドのジュネとともに「マリア023 」を結成。ドラマーとしてテイユウ(後のじゃがたら)も加入し、サイケデリックでグラムなロックで異彩を放った。たが、ジュネとの強烈な個性のぶつかり合いから、ノンは脱退。マリア023 はその後、OTO (後のじゃがたら)等が参加し、ゴジラレコードからシングル盤をリリースした。ノン在籍時の音源は、ゴジラレコードのオムニバス・アルバム「CRACK!」(徳間ジャパン)に収録されている。
79年夏の新宿ロフトでの伝説的イベント「DRIVE TO 80's」に、ノンは飛び入りで参加。ベースの弾き語りで数曲歌い、強烈な印象を残した。その秋にはドラムのケイコとともにNON BANDを結成。女のパワーを炸裂させたステージで注目を集めた。その後、ギターが加入するなどメンバーチェンジを繰り返し、その間にオムニバス「都市通信」に参加、またソノシート「NON BAND'in LIVE」をリリースしている。
81年にバイオリンの山岸騏之介、ドラムの玉垣満とのトリオとなり、バンドとしての形が固まってからは、その個性豊かな音楽性と、ノンの自由でのびやかなステージングで、シーンを代表するバンドのひとつとして、高い評価を得ることになる。1982年にテレグラフ・レコードから25センチのミニ・アルバムをリリース。インディーズのベストセラーとなった。リリース後のツアーでは、クミ(ボーイズ・ボーイズ/モンスター・ビーチ・パーティ)とミツワ(S-KEN /東京ブラボー)の二人が参加。女三人が並ぶフロントのパワーは圧倒的で、一段とスケールアップしたステージが展開された。夏のツアーでは大坂城野音のイベントで、P-MODEL 、町田町蔵等と共演。知名度では劣るNON BANDがトリに登場したため最初は戸惑っていた観客も、次第にそのエネルギーに動かされ、最後は熱狂的な盛り上がりをみせたのだった。
実力とともに人気も上昇し、これからの活躍が期待された矢先、そのツアーを最後に玉垣満と山岸騏之介が相次いで脱退。メンバー間のコミュニケーション不足が原因と思われるが、新メンバーの参加もなくバンドはそのまま自然消滅してしまう。NON BANDの絶好調期での活動停止は、東京の初期インディーズ・シーンの最も大きな損失だったといっていいだろう。
●NON in 弘前NON BAND以降、ノンはソロでのライブ、モギエミコ、森イクエとの「福娘」のセッション・レコーディグ、NAM への参加など、断続的に音楽活動を続けていたが、95年に故郷の弘前に帰り、実家の仕事を引き継ぐことに。家業の画材屋の仕事と、二人の子供の世話に忙殺される中、再びベースを持っての弾き語りを、地元のライブハウスや反原発のイベントなどで行うようになる。
99年5月には、灰野敬二と吉田達也を呼び、初めて地元のライブ・ハウスでライブイベントを開催。ノン自身もベースの弾き語りで参加し、灰野、吉田とのセッションも行った。世界のオルタナティブ・シーンの第一線で活躍する二人を相手に、一歩も引かずに自分の世界を表現したノンは、新たな音楽的可能性を示したのだった。このイベントを機に、ノンは音楽活動を本格的に再開。翌2000年1月には、東京で山岸騏之介、玉垣満とともに17年ぶりとなるNON BANDのライブを行った。翌日には、灰野、吉田とのセッションも再び行い、さらにその音楽世界を深化させた。その年の夏には、ルインズ、キキオンを呼んで弘前で再びライブイベントを開催。その後は、地元のミュージシャンとユニットを組んで定期的にライブを行っており、新しい曲も増えている。
そして2002年1月、NON BANDのメンバーや吉田達也の参加を得て、NON BAND以降の曲を収めた、初のソロアルバムを完成させた。今生きているこの日々を大切にしつつ、ほんとうの豊かさを求めて歌われた彼女の歌は、心の深いところにまで、時に力強く時に静かに、伝わってくる。
参加メンバーノン(ボーカル、ベース)
山岸騏之介(ギター、ブズーキ=民族弦楽器、バイオリン)
玉垣満(ドラム、パーカッション)
佐々木絵美 from キキオン(アコーディオン、グロッケンシュピール etc.)
吉田達也(ドラム、ダルブッカ=民族打楽器)
収録曲 1.Immigration (ノン vo.b 、山岸 eg 、吉田 ds) 2.Vagabond (ノン vo.b 、山岸 bouzouki 、玉垣 ds 、佐々木 per) 3.CHILE ・魚 (ノン vo 、山岸 bouzouki 、佐々木 acd) 4.O.K.Love Song (ノン vo.b 、山岸 eg 、吉田 ds) 5.あふれる (ノン vo.b.kalimba 、山岸 bouzouki 、玉垣 ds 、佐々木 gloken 、田口史人 口琴) 6.お金をくれたKどん (ノン vo.b 、山岸 bouzouki 、吉田 dar、佐々木 per) 7.善でも悪でもない精霊 (ノン vo.b 、山岸 violin 、佐々木 acd、吉田 voice) 8.家 (ノン vo.b 、山岸 violin 、玉垣 ds) 9.Quiet Song (ノン vo.b 、山岸 violin 、玉垣 ds 、佐々木 bells) 10. ひまわり (ノン vo.b 、佐々木 acd) 全曲 作詩作曲 ノン 発売:OZ disc (OZD087) 2002年10月リリース 定価: 2,500円(税別)
●NON DISCOGRAPHY
・「CRACK!」ゴジラレコード・コンピレーション (CD / WAX 1991)
マリア023 (ジュネV.G.ノンV.B.) の曲「TOKYO 」を収録(録音1979)
・「都市通信」(オムニバスLP / カムイレコード 1980)
NON BANDが2曲参加。他の参加バンド/螺旋、シンクロナイズ、美れい
・「NON BNDIN'LIVE」(ソノシート二枚組 / Volt'n Ampere 1980)
・「NON BAND」(25センチLP / TELEGRAPH RECORDS 1982)
全7曲。NON BAND; NON vo.ba 、山岸騏之介 violin,clarinet、玉垣満 ds
・「ELECTRIFIED 福娘」(30センチEP / TELEGRAPH RECORDS 1985)
福娘; NON vo.ba., EMIKO M. gr, IKUE MORI per.
・「NON BAND」(CD / WAX.徳間ジャパン 1990)
1982年のテレグラフからのアルバムに未発表ライブ4曲加えCD化。入手可能。
「NON BAND」(25センチLP / TELEGRAPH RECORDS 1982) 「NON BAND」(CD / WAX.徳間ジャパン 1990)この他「REBEL STREET」(徳間ジャパンLP 1982/CD 1999)、「TELEGRAPH WORKS 」(徳間ジャパン CD 1990) のコンピレーションに、テレグラフのアルバムからの曲が収録されている。
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