松井良彦監督インタビュー
── そうだったんですか。 『追悼のざわめき』の名残りというよりも…自然な形じゃなかったんですよね、僕自身が。がんばって無理をしてたんですよ。がんばってドロドロにしてやれっていうところがあったんですよ。それは今の51歳の僕の自然なかたちじゃないなと思って。
やっぱり、基本的に犯罪でスタートした恋愛っていうのは、成就してほしくないと僕は思っているんですね。それは、高校時代に観た映画『俺たちに明日はない!』で、そう思いましたね。どんなに素晴らしい恋愛であったとしても、もしそれが犯罪から始まっていたら成就させたくないなぁと思いますねぇ。 ── ほかに『追悼のざわめき』の時と、表現方法とか何か変わったと自分で感じたところはありましたか。 絵コンテをずっと描いて…。で、現場が始まると、これはいらないと明確に見えてくるんですよ。机の上のイメージと現場とは違いますからね。で、現場の匂いを嗅いだことで「これはいらん。いらん、いらん」って分かってくるんですね。で、さらに絵コンテを書き換えたりして。それで撮り終わるでしょ。編集の段階でも、そうです。「ああ、これはいらん、これはいらん」ってのがありますね。つねにその時点でのベストなものを選ぶために、こと細かく、しつこいくらいに点検・確認作業をしていますね。 ですから、創る時って、ほんと僕は愚直だなと思いますね。というのは、僕はサイレント映画を創ってるつもりで絵コンテを描くんですよ。ですから、音も台詞もなくても分かるものを創りたいと。『追悼のざわめき』もほとんど台詞ないんですが、だいたい僕の思いはお客さんには伝わってるだろうと思うんでね。…少し傲慢ですかね。 ── いや、伝わってると思います。 だからほんとに愚直だなと思います。とにかく現場始まる前に、みんなスタッフに判ってもらいたい。だから誰が読んでもわかるような台詞を書き並べて。で、みんながわかってくれたらそれを省いていくってね。ですから、そういう創り方しかできないのかな。人に気を使って、一人でも多くの人に判ってもらえるように。で、判ってもらえたら省いていく。 ── 松井さんに「わかってもらいたい」という気持ちが強くあるというのは、『追悼のざわめき』のイメージからすると意外な気もするかもしれないですね。 だから、『追悼のざわめき』の録音をやってくれた浦田さんって言う人が今回の録音もやってくれたんですけど、「松井ちゃんの映画は台詞も音楽も何もいらねえよ、効果音もそう。無くても充分わかるよ」って言ってくれるんですね(笑)。それはめちゃくちゃ嬉しいですけどね。ただ、そんなわけにはいかないんで。音入れないと(笑)。 ── 今回はカラーですけど、色が綺麗なのが驚きました。透明感が感じられて瑞々しいというか。 だけど今回、柏原さんは目鼻口とくっきりとした美青年なんで。あんずさんは凹凸のない顔なんですけど(笑)。で、彼を使うんで、じゃあいっぺんカラーでやってみようかなと思ったのが、これですね。 今回カラーにした意味合いはもうひとつありまして、柏原君はずっと最初から最後まで黒系の服でいってるんですね。あんずさんは赤系なんですよ。証拠隠滅するところから彼女も黒に変わると。そこで彼の色に染まるということで、それからずっと最後まで黒。そういう意味で黒と赤の使い分けはカラーだからできたのかなと。
── そんなこともないと思うけど。やっぱりあそこまでとことんまで突き詰めてると。 ですからもう怖いものなしですね、今は。そういう意味でほんとにやって良かったなぁと。今後、多少の難題がふっかかってきたとしてもまかしとけよと。ちゃんとこなしてやるよっていう、それぐらいの気持ちになりましたね。 ── いよいよ、これがまたスタートになった感じですね。
小さな町工場で働く青年アキラ(柏原収史)。彼を金で買って性的欲望を満たしている刑事の福田(佐野和宏)。アキラの親代わりでありながら彼に対して異様な執着を示す社長の木下(朱源実)。そして鬱屈した日々をおくるアキラの前に現れた香里という謎めいた女(あんず)。ホモセクシャルを機軸とした彼らの錯綜した関わりは、やがて後戻りのできないカタストロフィへと導かれる。 公式ページ
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