第三話『根本敬』
根本さん、お元気ですか?
以前マンダラIIで、石川浩司、突然段ボール、幻の名盤解放同盟、そして私、大谷氏との4組で『完全な組み合わせ』というイベントでお逢いしたキリですが、EATER 誌上の根本さんのマンガを拝見し、いつもサスガだなあと感心しております。
お恥ずかしい話ですか、私も20才の頃、歌手兼マンガ家を目ざした時期がありました。コンテストやコンクールの類が嫌いな私は、直接レコード会社や出版社に乗り込んだりしました。いづれも全く相手にされませんでした。それを時代のせいにするつもりは毛頭ございませんが、その80年代初頭というのは、あらゆる文化的なものが頽廃に突入する時期だった気がします。
その時、出版社の人に言われた言葉を、今もよく覚えています。
『君のマンガは読む人を殴っている。これからはそれじゃダメだ。今の人は、誰かが殴られるのを見るのは好きだが、自分は殴られたくないんだよ。』
音楽にも、あてはまる言葉だったかと思います。
すべての文化が大衆の名のもとに、メジャー化とサービス化が正当化され、アンダーグラウンドなものには、キツい80年代でありました。90年代に入って、ようやく何でもアリの時代に少しはなって来たような気がします。大サッパに言って。
そして、21世紀、今も「これでも喰らえ」とばかりに、ひどいマンガを描いてる根本さんは、やっぱりパンクだなあと思います。(完)
PS. 西荻窪「ニヒル牛」や中野「タコシェ」にて、大谷文庫として、いくつかマンガを販売しております。どうぞよろしくお願いします。